小沢昭一の処女著作の文庫版。「河原乞食」を自認する筆者が日本の芸能のルーツを探るべく、社会からあぶれたマイノリティが育んできた技芸の成立ちや実態を自身の足で辿っていく。三章に分かれ、一章「はだかの周辺」はストリップ中心の話題。二章「愛敬芸術」で取り上げるのは大道具売り、香具師(テキヤ)、演歌など。臨場感を保った路上で収集された見世物口上の記録やストリップ嬢の聞き取りはいずれも貴重。人情と芸能愛をにじませる軽妙洒脱な書き口は楽しく、また泣かせる。鶴見俊輔『限界芸術論』を筆頭とする思想の科学の研究方向を地で行くフィールドワークの本。
本書の後半分は三章「ホモセクシャルについての学習」に割かれ、古今東西のホモセクシャル論を参照しながらゲイバーのママなどの聞き取りを収録。「ゲイは芸に通ず」としてホモセクシャルがいかに演技や技芸に連なるかが語られるが、いかんせん女性性、男性性、そして異常性としてのホモセクシャルという固定図式が揺らがず、個人の経験や印象に根差した推量や独自解釈が多いので、1969年という初版年を差し引いて、あくまで当時の受け止められ方として時代考証の参考になる程度。付録として加えられた敗戦直後の落語の想い出も良い。
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私は河原乞食・考 (岩波現代文庫 文芸 94) 文庫 – 2005/9/16
小沢 昭一
(著)
- 本の長さ413ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日2005/9/16
- ISBN-104006020945
- ISBN-13978-4006020941
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (2005/9/16)
- 発売日 : 2005/9/16
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 413ページ
- ISBN-10 : 4006020945
- ISBN-13 : 978-4006020941
- Amazon 売れ筋ランキング: - 515,850位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 642位落語・寄席・演芸 (本)
- - 718位岩波現代文庫
- - 2,557位映画 (本)
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2017年3月31日に日本でレビュー済み
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2016年12月30日に日本でレビュー済み
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小沢昭一さんの最初の本(初版1969年)ですから、60年代にすでに消えゆきつつあった芸能についての貴重な記録です。小沢さんが各地を訪れて、いろんな芸人にインタビューを試みていきます。その軽妙なやり取り、語られる過去のこと、読むうちに小沢さんと一緒に旅をしている気分になります。芸能の根源に迫ろうという知的野心を持った小沢さんですが、そこは気取らない。ストリッパーにも呼び込み人にも本音を語らせていく。芸と人生、この世が見える。小沢さんはこれらの芸も芸人も消えてゆくという定めを見据えながら聞いては書いておられたのでしょう。
残念なことに、この岩波版には初版に掲載されていた写真(小沢さんが撮影)の多くがありません。
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